令和4年7月21日
1学期終業式 校長訓示 テーマ「己こそ己の寄るべ」
あらためまして、みなさん、こんにちは。今日で1学期も終わりです。
皆さんは始業式で私が話したことを覚えていますか。そうです。「海賊王を目指しましょう。」です。中等部1年生と高校1年生は始業式に出ていないので、かいつまんで海賊王の経緯を説明します。
静岡大学教授の小林朋子(こばやし ともこ)先生が取り組んでいる「レジリエンス教育」の話がきっかけでしたね。「レジリエンス教育」とは、何事にも影響を受けない鋼の心を目指すのではなく、逆境に陥ってもしなやかに立ち上がり、元に戻ろうとする心、しなやかな心を育もうという教育です。
どうしたら、しなやかな心が手に入るのか調べてみたら、楽観的で、思考が柔軟で、何でも相談できる仲間がいて、挑戦し続けられる人というキーワードが出できたので、ワンピースの主人公のルフィようですねという話から、海賊王を目指しましょうとなった訳です。これが、南陵祭ステージ部門のオープニングにつながります。皆さんは海賊王になれたのでしょうか。
さて、少し唐突な話になりますが、私は大学生の頃、少林寺拳法にのめり込んでいました。もともと格闘技が好きだったこともあり、大学の授業や部活動が終わってから、近くの道場に通いつめて、練習に励んでいました。
少林寺拳法は肉体の鍛錬に加えて、精神修行も重視していて、稽古の前に必ず皆で唱和する言葉があります。その中の一つに、「己こそ己の寄るべ、己をおきて誰に寄るべぞ、良く整えし己こそ、まこと得がたき寄るべなり。」 という言葉があります。もともとは釈迦の説法の一節だと聞いたことがありますが、詳しくは知りません。
わかりやすく言い換えると、「自分自身こそ、自分が一番頼りとするべき拠り所である。自分以外の一体誰を頼りにするのか。よく鍛えられた自分自身こそが、本当に素晴らしい拠り所なのである。」という意味でしょうか。
この言葉の意味は、「他人を頼りにしてはいけない」という意味ではありません。困った時には、親や友達や先生など、身近にいる誰かを頼っていいと思います。ただ、私はこの言葉の意味を「自分が生きていく上で、自分の心や体を鍛えることが何よりも大切であり、人生において一番に頼りになるのは、心身共に健康で鍛え上げられた自分自身である。」と捉えています。
敵と戦って戦闘レベルを上げていくゲームがありますね。現実の人生においてこそ、自らのレベルを上げて、いざという時に頼りになる自分を築き上げていくのです。ゲームみたいにゾンビと戦う必要はありません。けれども、課金すれば一気にレベルアップする訳でもありません。とにかく、地道に自らを鍛えていくしかないのです。それでは、具体的にどうやって鍛えていくのでしょうか。
例えば、夏休み中に毎日3時間の家庭学習に取り組もうと決めます。けれども、YouTubeも見たいし、ゲームもやりたい、そもそも暑くてやる気が起きないなど、計画通りに達成できない日もあるでしょう。できない日があってもよいと思います。ルフィもちょいちょい負けます。一方で、達成できた日は自分の弱さに打ち勝った気持ちになります。こうした小さな勝利の積み重ねは、やがて大きな自信になります。
学習に取り組むことで学力は上がるでしょうし、部活動に取り組むことで技術や体力は向上するでしょう。それだけでも、いざという時に頼りになる自分に近づくと思います。ただ私はそれ以上に、自分の弱さと向き合いながら、自らを奮い立たせて、物事に取り組む行為そのものが自分を強くする営みだと思います。
ここ数年、新型コロナウイルス感染症の流行やロシアによるウクライナ侵攻など、想定外の出来事が起きています。この予測困難な時代を皆さんは生きていかなければなりません。こんな時代だからこそ、いざという時に頼りになる自分、自らの「寄るべ」となるような自分自身を築き上げてほしいと願います。
さあ、明日から夏休みです。夏休みは2択です。自分自身を鍛え上げる、人生を賭けた、この壮大なゲームにチャレンジするか、しないか。2学期になって、レベルが上がった皆さんに会えることを楽しみにしています。