令和4年度 清水南高等学校中等部 卒業式 式辞
明るい早春の日差しに、木々の梢にも新芽のふくらみを感じる季節となりました。本日ここに、令和4年度、静岡県立清水南高等学校中等部の卒業証書授与式を挙行するにあたり、御来賓の皆様方の御臨席を賜り、教職員一同心から感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を手にした百二十名の卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。
三年前、皆さんが中等部に入学した時は、ちょうど、新型コロナウイルス感染症が国内で流行し始めた時期でした。入学式直後から臨時休校となり、社会全体が先の見通しが立たない状況の中で、皆さんも自分たちの学校生活がこれからどうなるのか、不安な日々を過ごしていたことと思います。
学校再開後も、マスクの着用、三密の回避、黙食など、新しくできた友達と思うようにコミュニケーションがとれない時期が続きました。本来であれば、友達との絆を深める機会となるはずの学校行事や部活動の大会も中止となりました。
それでも、皆さんは明るく前向きに学校生活に取り組み、三年生になると、学校生活も徐々に本来の姿を取り戻してきました。今年一年の皆さんの姿を思い返してみると、授業に臨む真剣なまなざし、部活動に打ち込むひたむきな姿、研修旅行での溢れる笑顔が思い浮かびます。皆さんはコロナ禍を乗り越えて、仲間としての絆を強く結んでいきました。
その集大成の一つが、「表現発表会」です。自分たちで考えた台本や演出、完成度の高い舞台装置、衣装、メイク、振り付けなど、三年生全員の力を結集して、「天使にラブソングを2」を披露しました。それぞれの個性を尊重して創り上げたミュージカルは、1000人もの観客の皆さんに感動を与えました。一つの目標に向かって、皆で力を合わせて成し遂げた達成感を忘れないでほしいと思います。
振り返れば、コロナ禍において我々は、人と人との絆の大切さにあらためて気付きました。また、当たり前の日常が実はとても貴重な日々であったことにも気付きました。この120人は、コロナ禍を一緒に乗り越えた仲間です。清水南高校中等部でこの仲間と出会えたことに感謝し、これからも仲間を大切に、誰かが困っている時には、みんなで助け合える集団になってほしいと思います。
最後になりましたが、御列席の保護者の皆様、改めまして、本日は誠におめでとうございます。大切に育ててこられたお子様が、健やかに成長を遂げ、ここに中等部の卒業式を迎えることとなりました。心からお喜び申し上げますとともに、今日に至るまで、本校に寄せられました数々の御協力に対しまして、改めて感謝申し上げます。今後も引き続き、本校の教育活動に御支援を賜りますようお願い申し上げます。
結びに、中等部を卒業する皆さんに石川啄木の短歌をはなむけの言葉として贈ります。
「不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心」
歌のおおよその意味は、「城跡の草に寝転んで空を眺めていると、心が空に吸い込まれそうに思った15歳のころよ」でしょうか。
この歌は、啄木が大人になってから、15歳のころの自分を回想して詠んだ歌です。空に吸われていったのは、自分でも説明しにくい苛立ちであったり、焦りであったり、ぼんやりとした不安だったのかもしれません。
十五歳になる皆さんは、いま中等部の卒業式に臨み、何を想っているでしょうか。まだ皆さんは、自分が何者なのか、答えを探している途中だと思います。高校生活は自己のアイデンティティを確立していく時期です。ここにいる仲間との絆を大切にして、感性のアンテナを高く張り、これからも皆さんらしく明るく前向きに歩んでほしいと思います。
卒業生の皆さんが、新たな気持ちで4月からの高校生活をスタートさせ、充実した毎日を過ごしていくことを心から祈念し、式辞といたします。
令和五年三月二十日
静岡県立清水南高等学校中等部 校長 小野田秀生